旅の途中の「NONOTABI」
(妻)この高田っていう集落でオーガニックの農法を行っているのは、うちだけなんです。うちの息子が“旅人(たびと)”って名前なんですけど、やっぱり旅っていいなと思っていて。で、「野の旅」って言葉を見つけて、野で暮らし、山で過ごすっていう意味があるそうなんですけど。響きもいいなと思って「NONOTABI」って名付けました。
暮らしを優先する農業
*農家さんにとって、土や地域を変えるのってかなり大きなことですよね?
ほんとにゼロに戻った感じです。川辺は盆地なので、夏はめちゃくちゃ暑くて湿気がすごくて、冬は寒い。(夫)草も元気だし種類も違うので、管理は前より大変。でも、今の畑の方が自由度はあります。今まで通りにやろうと思ったけど、土の状態があまり良くなくて。今でやっと3年目、ようやく土づくりが実を結んできたかなという感じです。
前は80品目くらいの野菜を作っていたんですけど、今は5品目くらいに絞っています。お金のために育てているのは、にんじん・かぼちゃ・オクラくらい。売り方も直売からJAのトラック便に変えて、単価が安いので量で勝負しています。なにより、自分たちの時間を作りたかったので販売方法を改めました。
歳をとって続けられなくなる前に、直売とかのスタイルは早めに見直そうと思いました。データを毎年取っていても、もう自然の変化に追いつかなくなってきている感じがするので、とらわれすぎずにやっていこうって。
バイトと農家の兼業
(夫)農業は自分たちがやりたいことだから、楽しくやれる形で続けたいです。今は農業と、ポップアップでタコス屋、洋服のリペア、それにバイトもしています。妻も外で働いています。農業だけで食べていこうとすると苦しかったけど、他でやりたいことを補って、生活できて、自分たちが幸せだったらそれでいいかなって。タコスでは野菜を仕入れる側にもなるから、料理人の気持ちがわかるし、バイトでは「雇われてお金をもらう」ありがたさを感じます。今の若い人たちも副業OKっていう流れになってるし、田舎で自分たちができることで、楽しく暮らせればいいなって。年に1回海外と国内旅行に行けたら、それでもう十分。経済的には多くを望まず、健康でいられたらいいかなと。
農家って、気象・生物・機械・地域・政治、全部関わってくるし、すごくクリエイティブな仕事。だからこそ飽きない部分もある。自然と向き合う分、よりいっそうそんな気がします。
専業の農家さんからしたら「ちゃんとやれてない農家」って見られちゃうかもだけど、自分たちとしては今のやり方が合ってるんじゃないかなと。