農業用語に「苗半作(なえはんさく)」という言葉があります。
苗の出来で栽培の良し悪しの半分は決まるよ、という意味の言葉です。
実際の期間で言うと苗づくりはだいたい1か月ほど、畑で過ごすその先の数か月に比べれば短い期間ですし、苗なんて葉っぱ数枚の小さいものなのですが、ここで強い生き物に育て上げることがその後のその作物の人生を大きく左右することになるんです。
<写真1 芽を出したところ。この時点でもすでに周りの環境に影響受けています>
例えば、水をジャブジャブ与えられた苗は水を探すために根っこを伸ばすことをさぼります。逆に乾燥したきつい環境を経験すると根を伸ばそうとするだけではなく、どうにかして水を吸おうとして根っこが吸水する力が強くなります。
他にも、肥料を必要以上に与えられた苗はこれまた根を張ることをさぼります。そして人で言うところの肥満でボヨンとしただらしない身体に育ってしまい、病気などにとても弱かったりします。逆に肥料がなさすぎると身体を作るエネルギーが足りず貧弱に育ちます。適度な栄養量が必要です。
今のように夏の暑い時期は暑すぎるので少し遮光をして涼しくするのですが、これもまたあまりに陰で育てると軟弱に育つ上に、いざ太陽を遮ることのない畑に巣立つと日射しの強さに耐えられずに枯れてしまったりします。
<写真2 太陽の光を受けて「やるぞ~!」と言ってるように・・・見えませんか?(笑)>
苗を育てていると、つくづく人間みたいだなあと思います。
僕は娘が二人いるのですが、苗を育てていると、よく彼女たちの成長を野菜に重ねてしまいます(笑)。
苗の期間は人間でいう子育て期間とそっくりです。甘やかしすぎもダメ、厳しすぎもダメ。独り立ちする時までに強い身体を作ること、その後に生きていくための能力を養うこと、これをしておく必要があるんです。
序盤に厳しすぎる環境に遭遇して拗ねてしまい、ずっと立ち直れない個体。苗の時に甘やかしすぎ、畑に植えた直後は環境になじめず辛そうな表情をしていたけれど、それを乗り越えて力強く生長していく野菜。
本当に、野菜たちの人生もいろいろです。そんな人生模様を、僕は勝手にドラマチックに見て楽しんでいます。
僕はもともと生き物に興味のなかった人間で、人間と植物を全く違ったものと捉えていましたが、生物の進化の系統樹をたどるとどちらも共通の祖先から枝分かれしており、遺伝子だって結構な部分が共通しているらしいです。
そう考えていくと、植物にとっても幼少期が人生を左右するんだろうし、人間と同じようにさまざまな環境を乗り越え、それぞれ違った姿に育つ植物がいても何もおかしくないよな、と思えるようなりました。
そんなことを思いながら野菜を見ると、一株一株が少し違って見えてくるから不思議です。
